
有田:岸田文雄首相は、今国会で出入国管理法改正案の審議を避けました。今夏の参院選に備え、議論が巻き起こるような法案審議をしたくないという政治的な思惑です。
それでも、法案はいずれ国会に提出されるでしょう。野党としては、仮放免の判断を入管庁任せにせず、司法の判断を入れるような改正案を考えています。これが世界の標準的な制度なんです。
指宿:今、政府が検討している改正案は、難民も入管の判断で強制送還ができるようにするもの。生命や自由が脅かされている人の強制送還を禁じた、国際法上の「ノン・ルフールマン原則」にも反するものです。
有田:都市部のコンビニ店員には外国人の労働者や留学生が多いですし、そこで売られるお弁当も、彼らが工場で働いてつくっている。少子高齢化の進む日本は、在日外国人の労働に支えられていることをもっと知る必要がありますね。
指宿:私は希望もあると思っています。ウィシュマさんの悲劇を通じ、若い人からも非難の声が多くあがりました。それが改正案の審議延期や映像の一部開示につながった。
ただ、岸田首相は映像をまだ見ていません。「聞く力」を掲げる首相なら、入管制度の問題点が詰まったこの映像を見てほしいです。
(本誌・西岡千史)
※週刊朝日 2022年3月4日号