有田芳生(ありた・よしふ)/1952年生まれ。出版社勤務を経て、フリージャーナリストとしてオウム事件などを取材。2010年参院選で初当選。著書に『私の家は山の向こう テレサ・テン十年目の真実』など (撮影/写真部・張溢文)
有田芳生(ありた・よしふ)/1952年生まれ。出版社勤務を経て、フリージャーナリストとしてオウム事件などを取材。2010年参院選で初当選。著書に『私の家は山の向こう テレサ・テン十年目の真実』など (撮影/写真部・張溢文)

指宿:そのとおりです。そもそも遺族の希望は、映像の視聴だけでなく、データの引き渡しです。

 当初、ウィシュマさんの妹のワヨミさんとポールニマさんは、姉が苦しむ姿が映された映像の公開を悩んでいました。それが、実際に映像を見て考えが変わった。「ぜひ、すべての日本人と日本にいる外国人に見てほしい」と訴えました。

有田:入管庁は映像の開示にずっと消極的で、国会で野党議員が要求した時も同じでした。

指宿:誰でも閲覧できるようになることを恐れているんでしょうね。

 現時点では名古屋入管の局長をはじめ、職員は誰も懲戒処分を受けておらず、訓告と厳重注意のみです。「逃げ切り」を許すわけにはいかないので、昨年11月には名古屋入管幹部らを殺人容疑で刑事告訴しました。一周忌となる3月6日も近づいているので、早急に国に損害賠償請求訴訟も起こす準備を進めています。

有田:入管庁は「保安上の観点」を理由に映像の開示を拒否していた。もっともな理由に聞こえますが、中身を聞くと「カギ穴が映る」「職員の顔が映る」といったもの。

指宿:仮に映り込んでも、カギ穴の映像から合鍵はつくれないし、職員の顔が映り込んでも映像にボカシを入れればいいだけのことですよね。

──職員はウィシュマさんに「鼻から牛乳や」「ねえ、薬きまってる?」などと発言していました。名古屋入管は他にどのような行為をしていたのでしょうか。

有田:論点の一つは、ウィシュマさんが亡くなる19日前(2月15日)に行われた尿検査です。その結果には、体が飢餓状態に陥っていることを示す「ケトン体3+(スリープラス)」という異常な数値が出ていました。

 最終報告書では、看護師はその数値を医師に報告したと証言しています。ところが、医師は報告内容について「記憶が定かではない」と回答をしているんです。もし、この時点で外部の病院に緊急搬送し、点滴などで栄養補給していれば、ウィシュマさんは生きていた可能性が高い。

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