ウィシュマさんが亡くなった名古屋出入国在留管理局
ウィシュマさんが亡くなった名古屋出入国在留管理局

有田:病院に連れていきたくなかったんですね。

指宿:ウィシュマさんは同居していた男性からDVを受けていて、ほとんど所持金もない状況で家を追い出されて、交番に駆け込んだところ名古屋入管に収容されました。20年8月のことです。

 当初は帰国の意思を示していましたが、20年12月ごろに日本に残留する意思を示し始めました。すると入管職員の対応が変わったんです。

 一時保護の収容生活から苦痛を与えるような対応に変わり、必要な医療も提供されませんでした。日本の入管収容は、帰国を促すための精神的・肉体的圧迫を加える手段なんです。

有田:入管庁は、ウィシュマさんの事件が大きな社会問題になったことを受け、今年1月14日に「出入国在留管理庁職員の使命と心得」というA4用紙2枚の文書を作りました。そこには「全ての人々の人権を尊重しつつ、(中略)全ての外国人の在留の公正な管理を図る」と書かれています。

 たしかにそのとおりなのですが、あくまで「使命と心得」。すべてが精神論なんです。日本の入管行政システム全体への反省はありません。

指宿:今の話は最終報告書にも言えることで、結論は「職員の意識改革」と「入管施設の医療制度の改革」。ですが、生命の危機に陥っている人が目の前にいても現場の判断で救急車を呼べなかったのには、もっと根深い構造的な問題があるはず。日本の入管行政システムの闇を無視して、末端の職員の意識改革だけをしても意味はないんです。

有田:現在、大村入国管理センター(長崎県大村市)には、ネパール国籍の男性が足にケガをしたままで収容が続いています。1月に立憲民主党の国会議員3人が面会に行きました。39歳なのに大腿骨頭壊死症がひどくなり、歩けない。それでも、手術を受けられない。こんなことが今でも起きているんです。

指宿:私は、国境や国籍、あるいは在留管理制度というものを全面的に否定しているわけではありませんが、ルールに反したからといって、その人の人権や生命まで奪っていいわけはありません。

暮らしとモノ班 for promotion
7月16,17日開催Amazonプライムデー。八村塁選手が厳選するアイテムは?
次のページ