指宿昭一(いぶすき・しょういち)/1961年生まれ。筑波大卒。弁護士。労働事件・外国人事件に専門化した弁護士業務を行う。入管の民族差別・人権侵害と闘う全国市民連合代表。著書に『使い捨て外国人 人権なき移民国家、日本』など (撮影/写真部・張溢文)
指宿昭一(いぶすき・しょういち)/1961年生まれ。筑波大卒。弁護士。労働事件・外国人事件に専門化した弁護士業務を行う。入管の民族差別・人権侵害と闘う全国市民連合代表。著書に『使い捨て外国人 人権なき移民国家、日本』など (撮影/写真部・張溢文)

指宿:実は、この時の尿検査については、中間報告書の段階では抜け落ちていました。理由を入管庁にたずねたら、「名古屋入管から報告がなかった」と。組織的隠蔽が疑われる重大な問題ですよ。にもかかわらず、報告が遅れたことに入管庁は何の説明もしません。

 名古屋入管が隠蔽のために報告を遅らせたのか、入管庁の指示だったのか。この点も今後解明していく必要があります。

有田:最終報告書には、心電図のデータがないんですよね。知人の医師に確認すると、脈拍数が50~156と大きく変動しているなら心電図を見なければならないと言っていました。

指宿:たしかに、心電図はもう一度確認してみなければいけませんね。

有田:最終報告書や映像にはない、いまだ隠されている情報に真実があるのでしょう。

指宿:2月23日には、職員は「病院に行けるようにボスに話をするけど、私には決定権がない」とウィシュマさんに説明をしています。ところが、実際に職員が上司にどのような報告をしたのかは現在もわかりません。

有田:2018年3月5日付の法務省入国管理局長名で出された文書では、入管施設の被収容者が体調不良を訴えた場合、「安易に重篤な症状にはないと判断せず、躊躇することなく救急車の出動を要請すること」と書かれています。通達を名古屋入管が守っていれば、ウィシュマさんは救急車で病院に運ばれていなければなりません。無意味な文書になってしまっている。

指宿:その通達は現実には守られてはいませんね。むしろ、私は裏のルールのようなものがあると思っているんです。

 たとえば、ウィシュマさんが亡くなった3月6日の映像では、14時7分に職員が何度も「サンダマリさん!」と呼びかけていますが、まったく反応がなかった。

有田:この時、職員が手の指を触って冷たかったことを確認しています。

指宿:ところが、救急車を呼んだのはそれから8分後の14時15分。おそらく、局長に許可を取っていたのでしょう。

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