プーチンはロシアの安全を確保するため侵攻は必要だと主張している。けれども、兄弟国を蹂躙(じゅうりん)して手に入れた栄光はけっして長続きしない。それどころか子孫は隣人の怒りに長いあいだ苦しめられることになる。
私たちはそのことをよく知っている。ほかならぬ日本がそうだからである。戦後80年近くが経っても、日本は東アジア諸国との真の友好を回復できていない。スラブ世界にも同じことが起こる可能性がある。すでに遅いかもしれないが、ロシア国民が同じ轍を踏まないことを望みたい。
東浩紀(あずま・ひろき)/1971年、東京都生まれ。批評家・作家。株式会社ゲンロン取締役。東京大学大学院博士課程修了。専門は現代思想、表象文化論、情報社会論。93年に批評家としてデビュー、東京工業大学特任教授、早稲田大学教授など歴任のうえ現職。著書に『動物化するポストモダン』『一般意志2・0』『観光客の哲学』など多数
※AERA 2022年3月7日号