大統領にプーチンを選んだのはロシア国民だから、全ロシア国民が責任を取るべきだと言われることもあります。でも、彼を選んでいなかったり、ずっと反対してきた人もいます。そして、彼に投票はしたけれど、ウクライナへの攻撃を選択するなんて想像だにしていなかった人がたくさんいます。

 8年前のクリミア侵攻でなぜ立ち上がらなかったんだと思うかもしれません。でも、そんなことを今言っても仕方ない。これから立ち上がることだってできます。

 僕自身、何を言っても自分が言い訳をしているように聞こえてしまうんじゃないかと思うこともあります。でも、今は戦争自体を早くやめてほしいと訴えることが大切で、ロシア人として反対の声をどんどん上げていかなければと考えています。声を上げている人まで攻撃してしまうと、みんな声を上げられなくなってしまい逆効果です。

 先日、テレビでウクライナ侵攻について話したときに泣きそうになってしまったことがありました。それを見て、「泣いている暇があったらお前が土下座する映像を流せ」「こんなことが起きているぞ」といったコメントと一緒に現地の動画を送ってくる人もいて。日本ではきっと、実際にロシア人を見て石を投げるといったことは起きないと思うし、ウクライナの人たちの苦しみとは比べ物にもなりません。でも、憎しみの感情が連鎖していくのはとても怖い。

■ロシア人に何のメリットもない

――ロシアでは2024年に大統領選が予定されている。プーチン大統領は「強いロシア」を維持するために侵攻が必要だったと訴え、国民のなかにはそれを信じている人もいるという。だが、「騙された」と感じているロシア国民もいる。

 そもそもプーチンは侵攻しないと言い続けていて、軍事演習をしていたのもウクライナがNATO(北大西洋条約機構)に加盟したときに核を向けられるリスクに備えてという名目でした。なのに、ロシア系住民の保護だと言って軍事侵攻をはじめた。しかもドネツクやルガンスクを越えて、キエフまで攻撃しています。「プーチンの言っていることが違うな」と感じた層も反対に回っています。

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「ロシア人にとって何のメリットもない侵攻」