ロシアのプーチン大統領と会談を重ねた安倍氏
ロシアのプーチン大統領と会談を重ねた安倍氏

 日ロ関係が典型的です。北方領土問題では、プーチン大統領は決して妥協しないと理解しているのに、甘い期待を抱いてしまった。平和条約の締結が実現したとしても国際的に評価されるとは思えず、そのうえ、妥協策を繰り出して「4島返還」を事実上諦める寸前までいったわけです。外務省も止められず、政権最後の実績づくりのため、「外交の定石」を無視して強行した面があったのでしょう。

 北朝鮮による拉致問題についても評価できません。長年この問題に取り組みながら成果がなかった。無理なら言わなければいいのに、それでも解決すると言い続けたわけです。

 被害者の家族や国民に期待をさせた分、その責任は重い。世論を自分に引き寄せるために、この問題を利用したのではないかと疑念が出てもおかしくありません。

 内政に亀裂を残しながら対外的には一貫した姿勢が評価された安全保障外交と、国内受けのため無理を強行した外交。この落差が安倍政権の外交の特徴だと言えます。

(構成 本誌・佐賀旭)

週刊朝日  2022年8月12日号