舞台、ドラマ、バラエティーと幅広く活躍する俳優の勝村政信さん。役者としての原点は、演出家の蜷川幸雄さんとの出会いだった。下積み時代の稽古は地獄のようだったという。
年齢を重ねていくことが、面白くてしょうがないという。現在は、高杉真宙さんとの2人芝居「ライフ・イン・ザ・シアター」の稽古中。演出を務めるのは同い年の千葉哲也さんだ。ある日、千葉さんが足を引きずりながら稽古場に現れた。
「朝起きたら、原因不明の激痛に襲われたっていうんだけど、『わかるよ、それ! 年をとるってそういうことだよね』と(笑)。ちょうど僕も、ある日の夕方、突然手が固まって動かなくなったことがあって。『リウマチかな?』とネットで検索したんだけど違った。年をとると、病名とかわからないところで、いろんなことがちょっとずつ不自由になっていく。それがおかしくて笑っちゃうんです」
今から12年前、蜷川幸雄さん演出の舞台に出演する40代の勝村さんにインタビューしたことがある。そのときは、「加齢とともに、体のキレは悪くなるけど、でも、経験によって獲得したスキルによって、昔は届かなかった場所に手が届くようになった」と語っていた。
「我ながら、いいこと言ってますね(笑)。40代の頃よりも、50代はさらに失うものが多くなって、獲得するものは減っていきます。でも、それはそれで楽しいです」
その口調は飄々としていて、ポジティブとかネガティブとか、そんなわかりやすい色分けのできる感じではない。「昔から物事を達観するタイプですか?」と聞くと、「達観というより、昔から、目の前で起こったことは素直に受け入れていましたね」と答えた。
俳優という職業に対する向き合い方も独特だ。これだけ売れっ子になっても、いまだに自分が芝居に向いているとは思っていないらしい。年に1本のペースで舞台に立っているが、とくに舞台へのこだわりがあるわけでもない。