コロナ禍で、がんや心臓病などの手術はどうなったのか。好評発売中の週刊朝日ムック『いい病院2022』(朝日新聞出版)では、新型コロナウイルスの流行が、医療界の「手術」へ与えた影響について迫った。『いい病院』では、「手術数」を切り口に、20年間調査を続けている。その調査結果も併せて2回に分けて報告する(※この記事は、2021年12月に取材したものです)。
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世界を震撼させた新型コロナウイルスは、医療界に大きな爪痕を残している。なかでもそのダメージを強く受けたのがコロナ以外の一般診療であり、手術の件数に関しても大きく減少することになった。
特に大学病院に代表される高機能病院。ここは本来、高度先進医療を実践する「地域医療の最後の砦」であり、がん、心臓疾患、脳疾患などの重大疾患の治療に当たるのが責務だ。だが、コロナ禍の混乱で受け入れ先が不足し、コロナ患者を受け入れたことで、本来すべき手術が後回しにせざるをえなくなるところも少なくなかった。
■初診患者数は16%減、手術件数は7・5%減
国内82の大学医学部と大学病院のトップで構成される「全国医学部長病院長会議」が2021年11月に公表した集計報告がある。
「新型コロナウイルス感染症が大学病院経営に与えた影響」と題されたその報告書によると、コロナ前の19年度の実績に対して、コロナ禍が始まった20年度、全国の大学病院の「外来延患者数」は493万人減少(-9.5%)、うち「初診患者数」は54万人の減少(-16.0%)と、大きく落ち込んだことがわかった。
受診する患者数が減れば、入院患者数や手術件数も減る。報告書によると、「入院患者延数」は272万人の減(-9.7%)、そして「手術件数」は11万件の減(-7.5%)と、前年度割れを起こしている。
同会議会長で藤田医科大学病院群統括病院長の湯澤由紀夫医師が解説する。
「診療科ごとに見ていくと、眼科、耳鼻咽喉科、皮膚科など、悪性腫瘍の比率が低い科ほど手術数の落ち込みが大きい。比較的悪性腫瘍の手術が多い婦人科などでも、良性疾患の手術だけが大きく件数を減らす傾向が見られました。