「コロナ禍2年目の21年になってからの初診患者に、“ある程度病気が進んだ状態”の症例を多く見かけるようになったのは事実です。その中には『昨年から気になる症状はあったけれど、病院に来るのが怖くて受診を控えていた』という話も耳にします。正直言って、コロナさえなければ……と思いますね」
■【独自調査】手術数が「増えた病院」「減った病院」
さらに、コロナが手術数に与えた影響を細かく見るとどうだろう。次は週刊朝日ムック「いい病院」が独自におこなっている調査を見ていきたい。
この調査は「いい病院」が年1回、毎年おこなっているものであり、今回は20年1月から12月の手術数を掲載している。21年9月に各病院に調査用紙を送付し、回答を得た結果だ。
20年の調査結果と、その1年前の19年の調査結果を比較し、手術数が「増えた病院」「減った病院」の上位を表にした。
この調査結果の「肺がん」と「大腸がん」によると、がん研有明病院は、肺がんは387例から273例へ、大腸がんは753例から574例など、いずれも手術を大幅に減らしている。
前述の佐野医師はこう話す。
「健診の受診抑制は深刻な問題です。日本対がん協会の調べによると、20年の対策型検診(市区町村でおこなう住民がん検診など)の受診率は対前年比で30%低下しており、これだけでも推定で3800例の早期がんが未発見のままという計算です。実際には任意型検診(人間ドックなど)の受診率も落ちているので、20年は『本来なら見つかるはずだった早期がん患者』の多くを見つけられなかった――という予測が立ちます」
■早期がんの手術が大幅に減っている
がん研有明病院の調査では、20年の胃がん手術数が前年に対して32%も減少している。
これを病理学的ステージごとに分析すると、ステージIA(がんが粘膜下層までにとどまっていてリンパ節転移がない)の早期がんが前年実績の半分に減っているのに対して、それ以外のステージの数字はほぼ変化がなかった。つまり早期がんの発見率だけが落ちている。