一方、コロナ禍で手術件数を伸ばしている科はありません。つまり、コロナ禍にあっても現場の努力で、緊急性の高い、必要な手術はおこなわれていたといえるでしょう」
■コロナ禍2年目、“病気が進んだ状態”の症例が増えた
コロナ禍において手術数が激減した理由は何なのか。まず挙げられるのが「健診や人間ドックの受診率低下」だ。
感染予防を目的に、政府は不要不急の外出を控えるように国民に呼びかけた。その「不要不急の外出」に多くの国民が「健診や人間ドック」を含めて考えたのだ。
たしかに健診を受ける時点の受診者は「患者」ではない。しかも、テレビを見ればコロナ受け入れで混乱する医療機関の映像が繰り返し流れる。
「忙しい時に健診などで受診したら迷惑なのではないか」と心配になったり、「病院に行けば感染するのではないか」と不安になったりしても不思議ではない。
だが、そうした心配・不安は、がんなどの重大疾患の早期発見を阻む危険性を孕んでもいる。
がん研有明病院病院長の佐野武医師に話を聞いた。
「国内でがんと診断された患者の情報を登録して国が管理する“全国がん登録”が16年にスタートし、これにはがんが発見された経緯も記載されます。その内訳を18年の5大がん(肺、胃、乳、大腸、子宮頸)で見ると、『健診や人間ドック』が約2割、『他の病気の経過観察中に偶然』が約3割。つまり、がんが見つかった人の半分は無症状だったのです。無症状ということは早期かそれに近いことが多く、治療によって治癒する可能性も大きい。日本は諸外国に比べて健診やドックのシステムが広く行き渡っており、このことががんの治療成績を押し上げています。健診受診率の低下は、その根幹の部分を揺るがし始めていることを意味するのです」
実際のところ、国民の「健診受診手控え」は、がん早期発見を遅らせているのだろうか。
都立駒込病院副院長の八杉利治医師は、こう語る。