同様の現象は膵がんでも見られた。病気の進行速度が速い膵がんは、手術で切除できるか否かが大きな分かれ目になる。19年と20年でこの差を検証すると、20年は「切除可能」と判断して術前化学療法をおこなった症例が100例から67例へと減った。
一方、「切除不能」と判断して化学療法だけをおこなった症例は189例から181例と、ほぼ変化なし。そして、「化学療法をおこなえないほど進行したがん」が増えていた――。
個々の病院で見られるこうした傾向を全国レベルで裏付けるには、数年単位での追跡調査が必要だ。
しかし、現場の医師の多くが、「コロナによる健診受診率低下」の影響が「早期がん発見の遅れ」として表れていることを、肌で感じ始めていることは確かなようだ。
(文/長田昭二)
※週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2022』より