一方、7本の論文は、ロングCOVIDを経験している人に対するワクチンの影響について調べていた。4本の論文は、ワクチン接種により、それまで経験していたロングCOVIDの症状が改善する人の方が、症状が悪化する人よりも多かったと報告している。
3本の論文は、ロングCOVIDを経験している人の症状が、ワクチン接種の有無でどう変化するかを分析している。ワクチン接種により、症状が緩和することが示唆された。
たとえばパリ大学などの研究チームが昨年9月に公表し、今年2月に医学誌「ランセット」のオンライン版に予備的に掲載された論文がその一つだ。感染後3カ月以上経っても後遺症が続く、910人について、ワクチン接種の影響を分析した。研究開始後60日ごとに後遺症の症状53種類、45日ごとにワクチン接種の有無についてを尋ねた。
研究開始から60日以内にワクチン接種を受けた455人と、受けなかった455人を比較した。120日後の分析では、ワクチン接種グループの16.6%が後遺症の症状が緩和したと回答したのに対し、未接種グループで症状が改善したのは7.5%にとどまった。
■空ける期間はまだ不明
症状が残っていても重症度が軽くなった人は、ワクチン接種グループの方が多かった。研究開始120日後に、「受け入れ難い症状がある」と回答した人は、ワクチン接種グループでは38.9%だったのに対し、未接種グループでは46.4%だった。
感染が判明してすぐにワクチンを打っても問題はないのだろうか。米CDCは、発熱などの症状がある期間に加え、他の人に感染させる可能性のある、隔離が必要な期間中は接種を控えるよう呼びかけている。
隔離期間終了後、感染からどれぐらい期間を空けて接種すればいいのかはまだよくわかっていない。WHOは、科学的、医学的には、回復した時点で接種が可能ではあるものの、感染直後には再感染のリスクが低いことや、ワクチンの供給が十分ではないところでは、感染後3~6カ月、接種を遅らせることもできるとしている。
米国は当初、抗体治療などを受けてから90日間経ってから接種、としていたが、オミクロン株の流行で再感染が増えていることなどから、希望者は隔離期間が終わればいつでも接種していいと変更した。厚労省も、同様の方針だ。(科学ジャーナリスト・大岩ゆり)
※AERA 2022年3月14日号より抜粋