ロシアによるウクライナへの軍事侵攻から2週間以上が経過した。いまだ平和的な解決には程遠い情勢だが、ここに来て中国の出方に注目が集まっている。ともに強権国家で、中ロ関係の結束が固いことはよく知られているが、一方で中国にとってウクライナも友好国のひとつ。3月1日には、ウクライナ外相が中国の王毅外相と電話会談を行い、仲介を求めたことが明らかとなっている。
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侵攻に関し、今のところ中国は表立って支持はせず、「ロシア側の決断を尊重する」と言うにとどまっている。国連総会の緊急特別会合での対ロ非難決議も、中国はインドやベトナムとともに棄権し、「反対」には回らなかった。
こうした中、中国国内のネット上では興味深い現象も起こっている。中国でも今回のウクライナ情勢について、国営メディアなどは大きく報じており、中国版Twitter(微博)でもウクライナ情勢に関連する見出しが連日トレンド入りしている。また微博では当初、ロシアの軍事侵攻を支持する内容のコメントが多く寄せられていたのだが、徐々に反戦を訴える内容やロシアを批判する内容のコメントが増えてきているのだ。
まず多いのは、反戦を訴える投稿だ。
「もう攻撃するのを止めて。平和を願う」
「早く停戦するべき。被害を受けるのは一般市民ばかりなのだから」
さらに、ロシア軍への批判も多く寄せられている。
「ロシア軍は早く自分の国に帰れ」「ロシアが他国を侵略した。支持者は金で買われたのか?」
「ロシアは本当に恥知らずだ」
なかには、プーチン大統領を名指しで非難するユーザーも。
「まさにプーチン帝国主義だ」
「プーチンは正真正銘の侵略者だ」
このように、中国ではロシアに厳しい言葉がSNS上で飛び交っているが、いまのところ当局からの大規模な削除にはいたっていない。いったいなぜなのか。中国ネット事情に詳しいライターの広瀬大介氏は言う。
「政府の方針と異なる政治的なコメントは通常、監視当局によって削除されることが多いのですが、今回は削除されずに残っているケースも多い。最近はウクライナ支持のコメントが目立っています。子供の救出シーンやゼレンスキー大統領の演説など、全て中国語に翻訳されリアルタイムで紹介されており、中国国内のネットユーザーをうまく味方に付けようというウクライナの戦略が奏功しているのだと思います。在中国ウクライナ大使館の公式微博アカウントには応援コメントが殺到し、ロシアを非難する声明に万単位の『いいね』がついています。寄付を募る投稿はさすがにコメント欄が閉鎖されていましたが、3400回以上リツイートされているので、実際に寄付した中国人もいると予想されます」