■中国はロシアを信用していない
SNS以外でもウクライナ寄りの報道が少なくない。中国メディア「東方網」(2月24日)は、ロシア軍によるウクライナ侵攻が始まった直後、現地の中国人留学生がウクライナ人の大家によって地下室にかくまわれた話を感動的に伝えている。さらに、「中国網易新聞」(3月3日)は、106名の現地中国人が大使館によって手配された大型バスで国境を超えポーランドに脱出した出来事について、「現地ウクライナ警察が警察車両でバスを安全に誘導してくれた」と報じ、中国のネットユーザーからは感謝の言葉が多く寄せられているのだ。
そもそもウクライナと中国は密接な関係にあり、現在、6000人以上の中国人が留学やビジネスのため滞在しているという(在ウクライナ中国大使館発表)。経済的な結びつきも深く、両国の貿易額は193億ドルにも上り、トウモロコシは823万トン、大麦は321万トンが中国へ輸入されているが、これらは中国の全輸入量の3割を占めている(2021年度、中国税関発表)。また軍事的関係も深く、中国初の空母「遼寧」はウクライナから購入したことは有名な話だ。さらにウクライナは「一帯一路」の要所に位置していることから、中国資本による投資も活発化していた。
中国事情に詳しいジャーナリストの周来友氏はこう述べる。
「ウクライナ侵攻を巡っては、中国国民は二分化されている印象です。知識や教養のある大卒以上の人は、ウクライナの肩を持つ人が多く、政府の反米プロパガンダを信じる層はロシアを擁護する傾向にある。ソ連崩壊後、ウクライナから多くの技術者が中国に渡り、情報や技術を提供しました。それがいかに現在の中国の科学・軍事技術の発展に寄与したかを知識のある人は知っており、シンパシーを感じている層が多いのです。一方、中国政府がどっちつかずの態度を取っているのは、根底にロシアへの不信感があります。中ロは蜜月関係にあると思われがちですが、アメリカと戦うために“仕方なく”仲良くしているという側面もある。1対1ではアメリカに勝てないことは、中国政府も重々承知していますからね。しかし、本音ではソ連時代に国境紛争を繰り返し、旧ソ連に領土を譲歩したり奪われた記憶も強く残っています。習近平国家主席としては、全面的にロシアに追随せず逃げ道を作っているという状況でしょう」
中国民衆の間で高まるウクライナ支持の声に、果たして、習近平指導部はどう出るのか。(山重慶子)
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