内照射のLDR(永久挿入密封小線源療法)は、外照射に比べて直腸などの周辺臓器への影響は少ないため、直腸や膀胱からの出血などは起こりにくい。また、勃起障害のリスクも低いが、排尿困難があらわれる。

 もう一点、考慮したいのが再発時のことだ。初期の前立腺がんは5年無再発が95%以上だが、5年以上たって再発するケースもある。最初に放射線治療を受けていると組織に癒着が起こり、再発時に手術が難しい場合がある。済生会病院の渡邊紳一郎医師は次のように話す。

 「ロボット手術では、放射線治療後の手術も可能になるケースが増えてきました。しかし、合併症からの回復の遅れなどが起きるため、とくに若い世代の患者さんには、初回治療は手術を勧めることが多いです」

 病院によって重点を置く治療法が異なる点も、前立腺がん治療の特徴といえるだろう。また、手術では排尿や男性機能の神経温存に取り組む病院、放射線では重粒子線治療、内照射の一種であるHDR(高線量率組織内照射)、短期間に外照射をおこなう寡分割照射などを手がける病院もある。それぞれの特徴や適応条件などを押さえたうえで、選択肢に入れるのもいいだろう。

■治療後はPSA定期検査で再発を早期にとらえる

 年齢、仕事や活動の状況、ライフスタイルなども判断材料に入れて、最良の選択をしたい。

 自治医科大学病院の藤村哲也医師はこう話す。

「PSAの検査値が10未満などの条件を満たせば、監視療法も可能ですが、重要なのは治療開始のタイミングを見極めることです。また、がんの治療後も定期的にPSA検査や生検を受けて、再発の兆候をとらえる必要があります。いずれも主治医とよく相談して経過観察を続けてください」

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【取材した医師】

自治医科大学病院 泌尿器科教授 藤村哲也 医師
済生会熊本病院 泌尿器科部長 ロボット低侵襲手術センター長 渡邊紳一郎 医師
(文/別所 文)

※週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2022』より