「赤ちゃんを産んでくれたママたちへ、ありがとうの意味を込めた応援歌のつもりで書きました。初めての子育ては不安がつきものです。それはわからないことばかりだからで、ストレスの原因になりがちです。そんなママを助けるのは知識です。自分自身の子育て体験で有効だったと感じたこと、私が大学で勉強したこと、母から学んだことなどから、確かなことだけを書きました。不安を解消し、楽しく子育てをしながら自分も成長する、そんな助けになればと思って書きました」
たとえば、赤ちゃんは音の刺激に驚くと突然体をびくっとさせて両手を万歳したように開くが、これは「モロー反射」という原始反射で、たとえ泣きだしてもあわてる必要はない。そんな、アグネス自身が多くの文献から学んできた科学の知見に裏付けられたアドバイスが細部にわたり書かれている。
「最近だと虐待や子育て放棄など、赤ちゃんを愛せない親が問題になりますが、これはたとえば赤ちゃんを抱っこすると母性本能が誘発され、顔を見つめ合って笑顔になれば幸せホルモンのオキシトシンが分泌され、子育てが楽しくなる。楽しく子育てできれば、それが自信にもつながっていくのです」
0歳教育にテーマを絞ったことにも裏付けがある。アグネスによると、それは子供の脳の発育の80%は3歳までに完成すると言われているからだ。ユニセフは人生の最初の1千日の時期に愛情とケアを受けている赤ちゃんは学校での成績、成人後の収入や健康にも好影響を与える可能性があるという。
「しかも1歳になると子供は歩きだします。歩き回らない0歳時代は子供を手の中に置くことができるので、母親がコントロールしやすいのです。その分、責任も大きいですが、子供の人生の底力をつける黄金期です。ここで頑張れば、ハッピーな子、ハッピーなママになれるからです。だから0歳教育は大切なのです」
◆長男のひと言に泣きながら謝罪
3人の息子を育てたアグネスももちろんこれを実践した。それが1987年の「子育て論争」にまで発展したこともあったが、それも「できるだけ子供のそばにいたかったから」という、母親として当たり前のことをしただけだった。3人の息子たちはそろってスタンフォード大学に入学し、今はアメリカで暮らしている。