「コンビニ百里の道をゆく」は、52歳のローソン社長、竹増貞信さんの連載です。経営者のあり方やコンビニの今後について模索する日々をつづります。
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スイーツといえば以前までは「ちょっとした嗜好品」「自分へのご褒美」といったイメージが強かったかと思います。それがコロナ禍になってから、より日常生活にどんどん入り込んできました。巣ごもり需要もありますが、やはり皆さんストレスを抱えていらっしゃるので、その解消に甘い物は欠かせませんね。
ローソンではコロナ以前から「新感覚スイーツ」というコンセプトで、これまでにない新スイーツをご提供したいと商品開発に取り組んできました。代表作のバスチーはお客さまのハートをつかんで大ヒット。商品開発部門のスタッフがアンテナを張って、ニーズの兆しを捉えた成果です。
最近のトレンドは本格志向です。昨年9月に売り出した生ガトーショコラはカカオと生クリームにこだわり、今年1月には累計1千万個を販売しました。そして次に挑戦するのはカスタード。なかでもシュークリームは食べたことのない人はいないくらい、ド定番のスイーツです。
洋菓子メーカーや街のスイーツ店がしのぎを削るなか、ローソンならではの特徴をどう出すべきか。正直すごくハードルは高いのですが、逆に腕が鳴ります。
まず担当者がたどり着いたのは、味の鍵を握るタマゴでした。エサにマリーゴールドと魚粉を混ぜると、色鮮やかな黄身となりコクが出る。そんなタマゴを生み出す養鶏業者を見つけてきました。タマゴひとつで、カスタードの味が段違いになるんです。第1弾として、そのタマゴを使った新商品「生カスタードシュークリーム」(税込み150円)、「埋もれるショートケーキプリン」(同350円)を売り出しました。
新商品を出したら一安心、ではありません。商品開発部門では、次のトレンドをつかむために動き出しています。ライバルは専門店。そんな気持ちで取り組んでいます。
竹増貞信(たけます・さだのぶ)/1969年、大阪府生まれ。大阪大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長
※AERA 2022年3月28日号