こういう女性は後を絶たない。契約書に危険を感じても、こわもての成人男性ばかりの空間で何も言えず、積極的な同意など一度もしたことのないまま、AVに出演する女性たちだ。誰も彼女たちを拉致したわけでもなく、監禁してもおらず、殴ったり、怒鳴ったりして、無理やりペンを握らせて契約書にサインさせたわけではない。それでもこれがフェアな契約と言えるのだろうか。判断力が未熟な10代を徹底的に性的に搾取するためのあれやこれやのノウハウを何十年も積みかさねてきた業界だ。どうやったって若者がたった一人で対等に自らの有利に働くように交渉できるような場所などではないのだ。もし「未成年者取り消し」民法規定がなくなったら、業者たちが狙いを定めるのはさらに若い世代になるだろう。
この問題について、被害者支援団体の「ぱっぷす」などが声をあげたことで、立憲民主党の議員等が国会で質問をしてくれてはいるが、もう時間はない。なにより、3月16日にこの問題に答えた野田聖子内閣府特命担当大臣の答弁は、冷酷なものだった。野田氏は、4月1日から何らかの対応をすることは不可能だ、と断じたうえで、こう答弁していた。
「(未成年者取り消しの民法規定がなくなっても)AVに出演強要の場合は、消費者契約法がある。また、大変ひどい強要をされた場合は、民法の詐欺とか強迫という理由で取り消しを行使することが可能だ。問題は、そういうことを(若い女性たちが)わかっていないというのが、事の本質だ。まずは若い人たちにそういうことはダメなんだ。なにかあれば窓口があって、そういうことは言うべきなんだと(とわかることが)とても大事な話だと、私は信じている」
野田さんが何を信じているのかは分からないが、AVに出演する女性たちが「法律が救ってくれる、何かあれば窓口がちゃんとある、自分の言い分は通る」ということを分かっていれば、「未成年者取り消し」民法規定がなくても大丈夫だ、問題は女性の意識の問題だ、その意識を変えればいいのだ、と考えていることは分かる。ずいぶん、冷たいじゃないか。