作家・北原みのりさんの連載「おんなの話はありがたい」。今回は、成人の定義が変わることの影響について。
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4月1日から、成人の定義が18歳からになる。
とはいっても、お酒やタバコは20歳からは変わらず、公営ギャンブルも20歳から、大手銀行のカードローンを組めるのも20歳からというので、成人になったからといって成人と同じ権利を得られるわけではない。むしろ、飲酒や喫煙をするには未熟だから「守らなければ」いけないし、ギャンブルなどからも「守るべき」存在だと考えられているのだ。
それなのに、である。どういうわけか、18歳のAV出演に関しては「どうぞ、あなたのご自由に、あなたのご判断で」と放置することを、今の政府は決めてしまった。
これまでも18歳からAVに出演する人はいた。それでも「未成年者取り消し」という民法規定によって、20歳未満であれば出演した後にも無条件で契約を解除でき、自分が出演させられたAVの流布や販売を止めることができた。これはAV業者としては大きな損失となるため、未成年者の出演を避けるメーカーは少なくなかった。つまり、法的に18歳の出演は可能だけれど、民法規定があるために、AV出演は20歳からという自己規制が働いていたのだ。
それが4月1日から「未成年者取り消し」の民法規定がなくなる。一番利益を感じているのは業者だろう。AV業界は、常に莫大な利益を生む若い新人を大きな口を開けて待っている。あの手この手で業者は若い女性を業界に引き入れるための努力を惜しまない。たとえば、高校生のときに「モデルになりませんか?」と原宿で声をかけられた女性がいる。憧れの仕事に就けるかもしれないと事務所に行くが、面接で「プロフィル写真を撮るから」と水着で撮影した。おかしいとは思ったが、大人ばかりの空間では何も言えずに言われるままに契約をした。差し出された契約書には「20歳の成人を迎えたらアダルトビデオに出演する」ということも明記されていたため、「AVは出たくない」と言うと、「芸能人になるための契約書には、みんなこれが入っているもの」と言われ、それ以上の疑問を差し挟めない雰囲気になってしまった。その後、望んでいたファッションモデルの仕事は当然来ず、ヌード写真などのグラビアの仕事をしていたが、20歳になったとたんにAVの仕事を指示された。断ると「契約書にある。契約違反になるから違約金が必要だ」と言われた。