林:ええ。

江口:何もすることないから原付き乗り回してると、かつての同級生たちが高校の制服で楽しそうに自転車乗って帰ってくるんです。いまの自分の姿を見られるのがすごく恥ずかしくて。早くどこか行ってしまいたい、ここを抜け出して東京に行ったら、自分がやりたいと思ったことがスタートできる。そう思っただけで、やりたいことがやれるという気持ちになってたんです。

林:でも、東京乾電池に入っても、ああいうところってお給料あんまりないんでしょう?

江口:もちろんないですし、公演をするたびに自分でチケットを売らなきゃいけないというノルマがあるんです。研究生を1年間やって、最後に卒業公演というのがあって、一人5万円のノルマだったんですよ。でも私、知ってる人に「お芝居見に来て」と言ってチケットを売ることができなかったんです。それって「私を見に来てね。おもしろいことするから」という自信がないとできないし、見られるのも恥ずかしいし、だから5万円全額自分で払いました。

林:えっ、そうなんですか。

江口:いまもそういうところあります。「見に来てね」とは言えないですね。

林:私もそういう気持ち、ちょっとわかる気がします。

(構成/本誌・直木詩帆 編集協力/一木俊雄)

江口のりこ(えぐち・のりこ)/1980年、兵庫県生まれ。2000年に劇団東京乾電池に入団。舞台、映画、テレビなどで幅広く活躍。過去の出演作に、舞台「奇跡の人」「寿歌」「神の子」「Home,I’m Darling~愛しのマイホーム~」、ドラマ「半沢直樹」「SUPER RICH」など。放送中のNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」に出演するほか、舞台「お勢、断行」(5月11~24日・世田谷パブリックシアター、28日~6月19日・兵庫、愛知、長野、福岡、島根)への出演が控える。

>>【江口のりこ、結婚相手は「俳優は絶対にイヤ」 理想は夢で見た外国人のおじさん?】へ続く

週刊朝日  2022年4月1日号より抜粋

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