週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2022』より

 痛みを訴える患者は、まずは整形外科で診察を受ける。X線、MRI、CTなどの画像検査により膝関節の変形の程度を正確に診断する。治療の基本となるのは、運動療法、薬物療法などの保存的な治療だ。

 飯田病院の鈴木健太郎医師は、次のように話す。

「可動域を広げるストレッチや筋力トレーニングなどの運動療法は、症状改善と再発予防のためにとくに重要です。保存療法をしても痛みで生活に困る場合、手術による治療を提案します」

 半月板や軟骨の損傷が痛みの原因の場合、5ミリの穴を数カ所開けて器具を入れて治療をする、関節鏡視下手術が可能だ。

「根本治療ではありませんが、負担の小さい手術で痛みの改善を図れます。関節鏡視下手術の技術を持つ医師がいる病院では、実施しています」(鈴木医師)

■入院はリハビリを含めて2週間程度

 正常な関節軟骨が残っており、年齢が比較的に若くスポーツなどの活動を希望する患者には、関節を残す骨切り術が選択できる。愛知医科大学病院の出家正隆医師はこう話す。

「骨切り術は、骨の一部を切って膝関節を安定した形に変える手術です。人工関節置換術より難しく、専門病院でおこなわれます。骨切り術ができる病院は、治療法の引き出しが多いといえます。骨切り術は入院・リハビリに数カ月と長くかかるのが欠点ですが、後は運動の制限がなく何でもできます」

 変形が進んで進行期から末期の場合には、膝関節を入れ替える人工膝関節全置換術(TKA)の適応となる。入院はリハビリを含めて2週間程度。治療成績が良い手術のため広く実施されており、患者の多くが痛みなく歩けるようになる。

 だが、ひざが曲がる角度は120度くらいまでとなるため、深くは曲げられない。おもに対象は60代以降となるが、最近では人工関節の耐久年数が長くなり、40~50代で選択する人もいる。

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