漢方薬は、低用量ピルが使えない場合に使用するほか、低用量ピルと併用することも多い。併用する目的のひとつは、ピルで改善しない症状への対応だ。例えば、ホルモンの変動にともなう症状や月経痛などはピルで軽くできても、疲労感や冷えなどが改善しなければ、そこに漢方薬でアプローチする。もうひとつの目的は、「有効な治療ができるように漢方薬で体調を整えること」と江川医師は話す。

「個人的な見解ですが、低用量ピルや抗うつ剤が吐き気で飲めない人には、もともと胃腸の弱い人が多い傾向があります。そのような場合には胃腸の調子を整え気を補う漢方薬を使い、PMSにとらわれず全体の治療を始めることもあります」

 一方、城田医師は「漢方薬は不調の根源に作用することで複数の症状を同時に改善できるメリットもある」と話す。

 例えば頭痛は、吐き気や冷えをともなう頭痛、めまいやのどの渇きがある頭痛、肩こりからくる頭痛でそれぞれ原因が異なり、処方される漢方薬も異なる。一方で、頭痛と同じ原因で生じているほかの症状は、適切な漢方薬で原因を正すことで改善できると考えられる。

 漢方薬と西洋薬の使い分けについては、症状や患者の希望などから決めていくという。

「例えば、頭痛のときは鎮痛薬で痛みを止めるなど、医学的に正しいことは治療の必要条件といえますが、それだけで十分とはいえないでしょう。考え方や求める治療は患者さんによってさまざまなので、治療も一通りではありません」(城田医師)

 そのため城田医師は考え得る治療の選択肢をすべて説明し、患者さん自身に選んでもらうと話す。

「例えば、『ピルはこの症状をとるのは得意でもこの症状は不得意』『漢方だとここは改善できてもここは難しい』など、細かく説明して優先して治したい症状を患者さんが決めます。するとその後、自身の症状の変化を感じようとする。そのように自分のからだを意識することも大事です」(同)

 漢方医学では、生活のなかでできるセルフケアを「養生」といい、十分な睡眠をとる、運動習慣をつける、必要な栄養をとるなど、生活を整えることを大切にする。

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