(週刊朝日2022年4月1日号より)
(週刊朝日2022年4月1日号より)

 食ドラマは昔から存在したが、昨今の作品は以前とは趣が異なるという。

「昔は『食をドラマ化するなら高級料理』という定説があり、フランス料理のフルコースを食べるような作品がもてはやされました。しかし、最近はそれが、我々の手が届く身近な食、追体験できてシンパシーを感じやすい食モノにシフトしています。『孤独のグルメ』や『おいしい給食』が良い例です」(永森氏)

 食ドラマには漫画を原作にしたものが多い。ドラマ界と呼応するように漫画界もまた、様々な「食作品」が咲き乱れる。「極主夫道」や「山と食欲と私」などの作品を手がけるウェブ漫画サイト「くらげバンチ」(新潮社)の折田安彦編集長が語る。

「漫画は絵がある分、小説よりイメージを持ちやすいですし、おいしさの表現も様々やりようがあるので、『食』を扱う媒体として相性がいいのだと思います。過去には『究極の~』といった料理が登場することが多かったですが、最近は、どこにでもいるような主人公が、どこにでもあるようなおいしいものを食べる作品が多い。作品中に出てくる食品が本当に存在するかのようにリアルに調理されていて、自然と身近に感じてしまいます」

 食ジャンルが流行しているのは、ドラマだけではない。テレビ東京とBSテレ東は3月8日、4月の番組改編会見で「グルメ」を主軸コンテンツの一つとして打ち出した。こうした傾向は、他局も同じ。今やゴールデン帯を中心に大食いなどのグルメバラエティーがひしめき、少々“おなかいっぱい”感がある。

◆視聴者が求める気軽な30分番組

 前出の久住氏は、テレビの現状についてこう指摘する。

「今のテレビはすごく刹那的。グルメ番組でも、一口食べて『うわ~、おいしい!』とコメントして、次のところへ行ってまた何か食べる。何かあるとすぐクイズにする。テンポが速くて、一日に何食も食べて、収録が終わったらもう二度と行かないという使い捨ての雰囲気もある。そんな番組があってもいいけど、そんな番組ばかりというのは嫌ですね。テレビの怠慢を感じてしまいます」

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