――作中、スリランカ人の夫と結婚した日本人妻に対して、入管の特別審理官が長時間のインタビューする場面が印象的でした。やり取りした内容は、実際に中島さんが取材して再現したものだったのでしょうか。
口頭審理の場面については、弁護士さん、元入管の審査官だった方に、詳しく取材しています。また、収容経験のある方や、仮放免の方にもお話を聞きました。しかし、「再現」というのは、なにかもとになるものがあって、それを複製するようなことを想像していらっしゃるのでしたら、それは違います。わたしは小説家なので、すべての場面はフィクションです。
――『やさしい猫』は、日本に根差して生きたいと願う外国籍の人々に対する国の姿勢を問うていますが、やさしく、わかりやすく入管問題を扱っています。執筆する時に意識したことがあれば教えてください。
仮放免、在留資格、入管、収容といった言葉を知っている読者はあまりいませんから、説明が必要です。その説明が、説明くさく、勉強くさくならないように、なるべくやさしい言葉で、一度、マヤ(女子高校生で日本人シングルマザーの娘)の頭を通って理解されたものを、マヤが解説するという形で書きました。
(構成/AERA dot.編集部・岩下明日香)