東京大学名誉教授の和田春樹さんをはじめとするロシア史研究者たちは「日印中によるウクライナ停戦仲介」を日本政府に呼びかけました。中国とロシアの関係は言わずもがなですが、岸田文雄首相が今回の日印首脳会談で「力による現状変更は許さない」と発表した際にも、モディ首相はロシアに言及しなかったことからもわかるように、印ロ関係は親密です。そんな2カ国が仲介の役を買うならばロシアを説得できるでしょう。

 しかし、ウクライナはそれでは乗れません。だからそこに日本の出番なのです。ロシア制裁に日本が加わったため、北方領土交渉の中断にはなってしまいましたが、それでも長年、培ってきた何らかのパイプはまだあるはずです。日本はインドと合流しながら中国に働きかけていく。仲介役をすることで中国は世界に自分たちは脅威ではないとアピールできますから、メリットはあります。ロシア史研究者たちのアイデアを本格的に検討すべきではないでしょうか。

姜尚中(カン・サンジュン)/1950年本市生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科博士課程修了後、東京大学大学院情報学環・学際情報学府教授などを経て、現在東京大学名誉教授・熊本県立劇場館長兼理事長。専攻は政治学、政治思想史。テレビ・新聞・雑誌などで幅広く活躍

AERA 2022年4月4日号

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姜尚中

姜尚中

姜尚中(カン・サンジュン)/1950年熊本市生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科博士課程修了後、東京大学大学院情報学環・学際情報学府教授などを経て、現在東京大学名誉教授・熊本県立劇場館長兼理事長。専攻は政治学、政治思想史。テレビ・新聞・雑誌などで幅広く活躍

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