週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2022』より
週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2022』より

■植え込みが治療の始まり。管理体制の確認を

 ペースメーカー治療とは、不整脈や重症の心不全に対して、電気刺激を発生させる医療機器(デバイス)を、心臓やその近くに植え込む治療だ。デバイスは主に3種類あり、脈が遅くなる徐脈の人に植え込む「ペースメーカー」が最も多く使用されている。脈が速くなる頻脈に対しては、「ICD(植え込み型除細動器)」と「CRT-D(両心室ペーシング機能付き植え込み型除細動器)」がある。

 ICDは、電気刺激や電気ショックによって頻脈を止め、突然死を予防する。ICDを植え込む目的には、大きく分けて「2次予防」と「1次予防」がある。

 2次予防では、心室細動や心室頻拍など致死的不整脈の発作を起こした経験がある人に対して、再発に備えるために植え込む。右のチャートの事例がそれだ。一方、1次予防は拡張型心筋症など心室細動や心室頻拍の原因となる病気があり、突然死のリスクが高い人に対して、発作を予防するために植え込む。東京女子医科大学病院の庄田守男医師はこう話す。

「ICDの植え込みは手術が必要なので、合併症のリスクがあり、植え込み後も誤作動や感染などのリスクがあります。1次予防については、年齢なども考慮し、ICDの必要性を慎重に判断することが大切です」

 CRT-DはICDの機能に加えて、心臓のポンプ機能を高める両心室ペーシング機能がついた機器で、重症心不全の人が対象となる。普段はペーシング機能を使い、致死的不整脈が出たら、ICDの電気ショック機能で止める。

■若い人に適したS-ICD。リードを皮下に植え込む

 ICDは本体とリード線からできていて、本体は心臓近くの胸部に植え込み、静脈を通してリード線を心臓の中まで入れる。心臓の電気信号がリード線を通して本体に伝達し、頻拍発作時には頻拍を抑えてリズムを改善する(抗頻拍ペーシング機能)。それでおさまらないときには心臓に電気ショックを与えて頻拍を止める。さらに徐脈に対するペーシング機能も備わっている。

 心臓内のリード線は長年挿入していると、断線や感染などのトラブルが起きやすくなる。この場合、リード線を抜去する必要があるが、長く入れているほど癒着を起こしやすく、抜去の際には静脈や心臓の損傷、それに伴う出血などのリスクがある。このため、抜去手術には特殊な技術が必要で、限られた病院でしかおこなわれていない。

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ペースメーカー治療は、植え込み後の管理が重要