そこで、「セルフ・コンパッション」(Self-Compassion)が鍵になります。
「セルフ・コンパッション」とは、文字通り「セルフ」。つまり「自分」に「コンパッション」、すなわち「思いやり」を向けること。シンプルにいえば、自分を労わる心の力のことです。
このコンセプトは、最近のポジティブ心理学で注目度ナンバー1のコンセプトといっても過言ではありません。
近年のセルフ・コンパッション研究によって自分を上手に労わることが私たちの心と体に良い影響を与えることが明らかにされてきました。
例えば、精神疾患一般に高い効果が見られるため、セルフ・コンパッションがアップするトレーニングが続々と心理療法の中に取り込まれてきています。
自己肯定感はもちろん、モチベーションが上がったり、幸福感が上がったり、忍耐力が上がったりと、私たちの心に良いことずくめです。
さらに、免疫力がアップしたり、私たちの体に現れる生理学的な効果も関連づけられています。
セルフ・コンパッション研究の先駆けであるテキサス大学オースティン校のクリスティン・ネフ准教授によると「自分を労わる力」には3つの基本要素があります。
(1)自分に優しくすること
失敗したり、悲しいことがあったときに、さらに自分に良し悪しの評価の目を向けて、批判的になってはいけません。
他の人が困っているときに優しく労わるような気持ちで、自分のことを積極的に癒そうとする心の力を働かせることが重要です。
(2)人間誰でも不完全だと認識すること
人間は有限的な存在で、自分の力でできることには限りがあります。
自分ではコントロールできないことが常に周りに存在し、その中でうまくやっていく努力をする。
どんなに成功しているように見える人たちでも、もちろん失敗はつきものなのです。
失敗や思うようにいかないことが起きるのは、私たちが人間らしく人間としての本質を生きているからだということを再認識する必要があります。