■1日3時間睡眠で英語を覚えまくる日々

「当然なんですが、授業も教科書も全部英語です。1ページ読むのに1時間かかって、読み終えたら『これ、関係ないページだった』ってこともありました。暗記も本当に大変で、たとえば頭蓋骨の骨や線やくぼみの名前だけでも200個あるんです。とにかく書いて覚えました。右手が痛くて書けなくなったら左手で書く。左手が痛くなったら、グーで握って書く。そのうち目がかすむので、目をつぶって頭の中に書いていく。夜中の3時まで勉強して、朝6時に起きて学校に行く。週末には必ず発熱していましたね」

「筋肉留学」だったはずなのに、運動も食事もまともにできずやせていく日々。なんのための留学?

「って、よく言われました(笑)。もう30歳だしタレントなんだから、大学で勉強するよりアメリカ横断旅行とかして話題を作ったほうがいいんじゃない?って。実際、『アメリカで運動生理学を勉強しました』って言っても『へぇ』で終わる、その程度です。でもそんなの最初から知ってました。知ってて挑戦したんです。なぜかって? そうですね、努力する道を選ぶほうがかっこいいと、努力は絶対に裏切らないと、ぼく自身が知っていたからだと思います」

 教えてくれたのは筋肉だった。

「筋トレは、がんばればがんばるほど結果が出ます。確実に体が変わるんです。でもぼくが芸能界に入った当初は『気持ち悪い』『脳みそも筋肉』って笑われていました。笑われても体を鍛え続けたし、タンクトップと短パンで現場に行きました。それで名前をおぼえてもらって仕事が増えた。英語も同じで、運動生理学が直接役に立たなくても、大学での学びはぼくの発言に説得力を持たせてくれるし、何より2年制の大学を1年半で卒業することができたことは、大きな自信につながりました」

 だからこそ、「先に損得を考えたりせず、まず始めてみて!」とメッセージを送る。

「英語を始めるなら、音楽でもマンガでもアニメでも、好きなものを題材にするといいと思います。好きじゃないと続きませんし、続けていれば先週よりも今週のほうができることが増える。そして来週にはもっとすごくなる。人に認めてもらえなくても自分でわかるし、どんどん面白くなるんです。でも、やめたくなったらやめていい。英語も筋トレも、まずは気楽に始めてください」

なかやまきんに君
1978年福岡県生まれ。高校卒業後、吉本総合芸能学院(NSC)大阪校第22期生に。2011年、米サンタモニカカレッジ運動生理学部卒業。21年東京ノービスボディビル選手権大会75キロ超級第1位。

(文/神 素子)

『AERA English2022』から抜粋

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