実社会では、論破のメリットは少ない? ※写真はイメージ (c)GettyImages
実社会では、論破のメリットは少ない? ※写真はイメージ (c)GettyImages
この記事の写真をすべて見る

 うつ病を克服し、偏差値29から東大に合格した杉山奈津子さんも、今や小学生の男の子の母。日々子育てに奮闘する中でとり入れている心理テクニックや教育方法をお届けします。杉山さん自身が心理カウンセラーとして学んできた学術的根拠も交えつつ語る『東大ママのラク&サボでも「できる子」になる育児法』も絶賛発売中です。ぜひご覧ください。

【動画】「論破王」ひろゆきがパリの自宅で撮影した妻・ゆかさんの漫画執筆風景はこちら

*  *  *

 近頃、「論破」という言葉をよく耳にするようになりました。その言葉を聞いて、最初に頭に浮かぶのは、2ちゃんねるの創始者である西村博之(ひろゆき)さんです。「論破王」というような呼ばれ方をされ、今や、テレビやネットで大活躍されています。

 私も、さまざまな人と議論をかわしているところをYouTubeで拝見しましたが、「そういう方向からの見方があるのか」と感心したり、「それはへりくつのような……」と思うこともあったりで、「この意見には、どんな返しをするのかな?」と、聞いていてワクワクしました。「なるほど」と思わされる返答を次々に繰り出し、相手の意見をバッサリと切っているところは、非常に面白かったです。 

 しかしそれはあくまで、ネットやテレビでのエンターテインメントとしての話。

■実社会では、論破のメリットは少ない

 私は普段から、「論破したところで何もよい結果は生まれない」と思っています。むしろ、「議論に負けたほうが、勝者になりえるのではないか」とさえ考えています。

 たとえば、午後1時に、Aさんたちと自分たちのグループの打ち合わせがあったとします。それが30分早まることになったので、その旨をAさんのグループに伝えました。しかしAさんのグループは時間になってもやってくることがなく、自分たちのグループは結局30分間待たされたとします。なにもすることがなく、ただずっと待たされたとき 、普通だったら、「打ち合わせが早くなると伝えたはずだけど」とAさんのグループを怒りたくなるでしょう。しかし場合によっては、Aさんのグループは、「そんなことは全く聞いていない」となり、言い争いになることがあるはずです。

 打ち合わせが30分早まることを伝えたメールなどが残っていれば確認できるかもしれませんが、もし口頭で伝えていた場合は証明する術はありません。たとえ書いたメールやメモが残っていたとしても、分かりにくく、きちんと伝わらなかったケースもあります。とにかく、時間に関して「言った」「言わない」の口論になり、せっかく打ち合わせのためにつくった時間までもが、無駄に使われてしまいます。

次のページ
争うより謝ったほうが勝ち?