週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2022』では、全国の病院に対して独自に調査をおこない、病院から得た回答結果をもとに、手術数の多い病院をランキングにして掲載している。また、実際の患者を想定し、その患者がたどる治療選択について、専門の医師に取材してどのような基準で判断をしていくのか解説記事を掲載している。ここでは、「大腸がん内視鏡治療」の解説を紹介する。
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大腸がんには、大きく分けて小腸から続く結腸にできる結腸がんと、肛門に近い直腸にできる直腸がんの2種類がある。
早期では自覚症状がほとんどなく、進行してくると便に血が混じる、便の表面に血が付く、便秘や下痢を繰り返すなどの症状が出る。肛門に近い直腸がんでは、手術後に排便障害が起きることも多く、肛門を切除して人工肛門となることもある。
大腸がんは腸の粘膜に発生し、進行するに従って粘膜の下の粘膜下層や固有筋層、漿膜下層など深部に進み、さらにリンパ節や周囲の臓器にも広がっていく。病期(ステージ)はがんの深さ、リンパ節転移、遠隔転移によって、0期~IV期で表される。
■ステージ0~Iで内視鏡治療が可能
治療方法は、ステージ0~Iでがんが粘膜下層の深さ1ミリまでに留まる早期がんの場合、内視鏡治療が可能である。ステージIでも粘膜下層の深い部分まで進んでいる場合とステージII以降は、進行がんと診断され手術による切除がおこなわれる。また周囲の臓器や肝臓、肺などへの遠隔転移がある場合には、抗がん剤による化学療法や放射線治療が主となる。
大腸がん手術には、従来の開腹手術とおなかに開けた複数の孔から内視鏡を挿入してがんを切除する腹腔鏡手術があるが、近年ではからだの負担が少なく回復も早い腹腔鏡手術が主流になっている。また直腸がんでは、腹腔鏡手術の一種であるロボット手術が保険適用になっており、おこなう病院も件数も増加傾向にある。
大腸がんの5年生存率はステージ0~Iで90%を超え、ステージIIでも80%を超える。早期発見のためにも、大腸がん検診の受診や、検診で潜血反応を指摘された際には大腸内視鏡検査を受けることが大切だ。