かつて盗撮事件で使われたものと同じタイプの単眼鏡
かつて盗撮事件で使われたものと同じタイプの単眼鏡

 だが、玄関ドアの向こうに誰かいるかもしれないと想像して暮らしている人がどれほどいるだろうか。

「被害に気づくことができず、犯行が埋もれているケースが多いのではないか」(小宮教授)

 小宮教授によると、部屋の作りで狙われやすいのは玄関から室内が見渡せるワンルームタイプの物件。

 また、「1K」の物件によくある、玄関から入ると細い廊下があり、片側にキッチン、反対側に風呂やトイレがある作りも危険だという。入浴前の脱衣と入浴後の着衣を廊下でする人がいて、玄関の位置から丸見えだからだ。

 対策は一つ。ドアスコープのカバーを取り付けるなど、レンズをふさぐこと。カバーは数百円で購入でき負担は少ない。

 ただ、誰でもできる対策にもかかわらず、「自分だけは大丈夫と思い込んで、簡単な対策を怠りがちなのです」と小宮教授は指摘する。

 空き巣などの犯罪にも共通するが、狙われる場所は犯人にとって「(犯行の場所に)入りやすく、(犯行が)見えにくい場所」だという。

 例えばマンションなどの集合住宅で言えば、共用廊下から玄関部分がくぼんでいるタイプは「見えにくい」場所だ。

「上層階は安全性が高いと思いがちですが、私が調査したある凶悪事件の現場は集合住宅の2階で、犯人は無施錠だったベランダの窓から室内に侵入しました。隣にある集合住宅2階の共用廊下とベランダが近接していて、犯人は共用廊下からベランダに飛び移った。つまり『入りやすい』場所だったのです。物件の条件ではなく、その環境を注視することが大切です」

 共用玄関がオートロックの物件もあるが、だから安全とは限らないという。

 小宮教授によると、こうしたのぞきや盗撮の犯人は、駅近くのコンビニなどで好みの女性を物色するケースが多い。買った商品などから、1人暮らしかどうかの“匂い”を感じ取る。そして、尾行して部屋を突き止める。オートロックの玄関でも、さりげなく後ろからついて行く。振り向かれない限り、顔を見られる心配もない。また、大阪で逮捕された男のように、同じマンションに住む人間が犯人だったケースもある。

「一般の方は、集合住宅なら他の部屋の住人に見つかりやすいと思うかもしれません。ただ、こうした犯罪者は、見つかるかもしれないというリスクさえスリルとして味わっていることを、よく知っておいてください。彼らにとっては、スリルのある魅力的な犯罪なのです」

 期待に胸ふくらむ新生活。安心な生活を守るため、まずは身近な対策を心掛けよう。(AERAdot.編集部・國府田英之)

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