それをアレンジして、76年に志村さんが「8時だョ!全員集合」の少年少女合唱隊コーナーで歌ったところ、奇抜な衣装も大ウケし、爆発的な人気を集めた。
その波及効果は絶大で、同市の渡部尚市長が「志村けんといえば東村山。東村山といえば志村けん」と公言するほどだ。
志村さんが亡くなって間もなく、「感謝の気持ちを表し、功績を残そう」と東村山駅東口に銅像を建てるプランが持ち上がった。地元有志による「志村けんさん銅像プロジェクト実行委員会」が、クラウドファンディングで建立資金を集め、昨年6月、羽織はかま姿で定番ギャグの「アイ~ン」ポーズの銅像が完成した。
銅像はすっかり観光名所となり、市内にある、志村さんゆかりの和菓子店などにもファンが訪れるという。
粉物が大好きだったという志村さん。うどんなら「こせがわ」だ。けんさんが実家に帰ると、兄の知之さんがうどん玉を買って迎えたという。
女将の岩崎和江さん(78)が話す。
「東村山周辺ではかつて、家庭料理として自家製うどんをよく食べました。早い話、“おふくろの味”なんです」
同店にも全国から志村ファンが訪れる。
「昨年秋には、志村さんそっくりのサロペットに赤いバンダナ姿で、北海道からお越しの方も。新型コロナで売り上げが低迷したものの、ファンの方々のおかげで乗り越えられました」(岩崎さん)
一方、東京都港区麻布十番にも志村さんがひいきにした店が数多くある。居酒屋やすし店、鰻からイタリアン……。
「庶民的な店から高級店までジャンルは問わず、さながら麻布十番飲食店の応援団長でした」(大手番組制作会社プロデューサー)
開店42年目。オープン以来、志村さんが足しげく通った純喫茶「おもかげ」の田口はる代ママは、こう懐かしむ。
「よく番組の打ち合わせに使ってくださいました。普段は、穏やかでニコニコされてるんですが、いざ仕事となると一変。空気感が変わるくらい真剣な表情でした」
店には、志村さんがボトルキープした芋焼酎「伊七郎」が未開封のまま残されている。
東村山も麻布十番もソメイヨシノは満開。桜の季節を迎えるたびに志村さんは思い出されるのだろう。(高鍬真之)
※週刊朝日 2022年4月15日号