非認知能力とは“数値化できない力”を指す。近年、教育分野で注目を集めているから、聞いたことのある人も多いだろう。「自分と向き合う力」(自制心や忍耐力など)、「自分を高める力」(意欲や向上心など)、「他者とつながる力」(協調性や社交性など)の三つに分類できる。
逆に読み書きなど学力をはじめとした“数値化できる力”を「認知能力」といい、認知能力と非認知能力の間をつなぐ力を「思考系能力」という。
「非認知能力は、決める力です。誰かが教えるのではなく、子ども自らが伸ばしていくもの。“生きる力”とも呼ばれ、先行きが不透明なこれからの時代、ますます重要になるでしょう」
■結果よりプロセス意識
親の話し方と接し方が、子どもの非認知能力を大いに左右するという。健全な決める力を育むポイントは以下の三つだ。
(1)子どもの決めたことを尊重する
親の価値観を子どもに押し付けない。「○○をしなさい」「○○をやめなさい」などの命令形ではなく、「○○してくれない?」のように問いかけて話すことを心がける。
(2)見取り、フィードバックする
子どもの意識が「結果」ではなく、「プロセス」に向くように働きかける。例えば、子どもがハサミの刃の部分を持ち、持ち手側を向けて渡してきたら、その行動を見過ごさず(見取り)、「ちゃんと持ち手側を向けてくれてありがとう」と言葉にする(フィードバック)。
(3)先回りをしない
子どもを心配するあまり、親はつい先回りして指示してしまいがちだ。だが、小さな失敗こそが成長の糧になると思って、しっかり見守る。例えば、子どもが転んだ時。「だから危ないって言ったでしょう!」と責めるのは避けたい。「転ぶこと=失敗」という価値観を植え付けるより、「転んだら痛い」と経験する機会も大切だ。「大けがにならないよう、転ぶ時に地面に手をついていたら、『転び方の天才だね』と言ってあげてください」
子どもの意思を尊重し、小さな行動にも気を配り、先回りせずに待つ──。書けばシンプルだが、いざ実践するとなるとなかなか難しい。セルフチェックシートを用意した。15項目の合計が30点以上の場合は、言葉がけを見直す必要がある。
「なぜセルフチェックをしてほしいかというと、子どもの反応だけではわからないこともあるから。子どもは親に忖度することがあります。親の期待を敏感に感じ取り、我慢していることもあります」(中山さん)
(編集部・藤井直樹)
※AERA 2022年4月11日号より抜粋