◆桜姫演じるのはこれが最後かも

──映像を拝見しましたが、ここぞというところでアップになって、ちょっとドギマギしました。

 そういう効果を想定したわけではなく、いいカットをつなげていくとそうなるんですね。つなげる作業というのは、歌舞伎に精通している人と知らない人がやるのでは全く違いますから。2人がしゃべっているから2ショット、3人だから3ショットということではなくて、歌舞伎って、しゃべってないところでも大事なことがあって、そういうところも理解してつなげていくように、お願いしました。

──2005年に始まった、舞台を映像化する「シネマ歌舞伎」についてはどうお考えですか。

 最初はあまり好きじゃなかったんです。二次使用というか、ただ撮って流しているというイメージがあって。でも自分が(編集に)入っていって、どうせやるならちゃんと映像としての作品を、と思ってやっていったら、2年目くらいからは納得できるものができるようになりました。

──歌舞伎を初めて見るという人にとってシネマ歌舞伎はハードルが低くて、ありがたい機会です。

 私が(桜姫を)演じるのは、もうないかもしれませんしね。映画なら退屈だったら途中で出ればいいし、疲れないでしょう(笑)。毎日同じようにやってもくれるし(笑)。上の巻だけでもいいし、下の巻と両方でもいいし。気楽に見られるのがいいのではないでしょうか。36年ぶりだとか、評判だとかあんまり意識しないで観ていただきたいです。

──期待しすぎないで、まっさらな気持ちで。

 はい。役者になってからずっと言っているんです。人の芝居を観るときは、まずは予備知識なしで観てみる。この芝居がどういう成り立ちか、この役者がどういう役でどんな評判をとっているかなんて調べなくてよいのではないでしょうか。調べるのは観てからでも十分です。

(構成/本誌・工藤早春)

週刊朝日  2022年4月15日号