しかし、81年の日本シリーズの胴上げ投手は江川卓(巨人)だった。その年の江川は20完投、翌82年も24完投をマークしている。江川は通算110完投、チーム内のライバル・西本聖も通算122完投している。89年11試合連続完投勝利、90年8試合連続完投勝利で2年連続20勝を挙げ「ミスター完投」の異名を取った斎藤雅樹が通算113完投だから、江川や西本のすごさが分かろうというものだ。江川・西本以降、斎藤を含めて「先発3本柱」と呼ばれた時代、槙原寛己が113完投、桑田真澄が118完投している。
すなわち、江夏豊の活躍で「先発」「抑え」の分業制が確立されて以降も、巨人には「先発完投型の絶対的エース」が存在した歴史があったということだ。
最近では「中継ぎ投手」を含め、投手はさらに分業制が進んだ。2021年セ・リーグ6球団の合計完投数は25で、6球団合計セーブ数は220(1球団平均約37個)。パ・リーグ6球団の合計完投数は25で、6球団合計セーブ数は206(1球団平均約34個)だった。
巨人の絶対的エースとして君臨してきた菅野智之の21年の完投数は「リーグ最多2試合」である。現在、新人ながらストッパーを任せられている大勢は、今後順調にセーブ数を伸ばし、通算100セーブを超えるような「絶対的な守護神」になれるだろうか。(新條雅紀)