倉科カナ [撮影/写真映像部・高野楓菜、ヘアメイク/草場妙子、スタイリング/道端亜未]
倉科カナ [撮影/写真映像部・高野楓菜、ヘアメイク/草場妙子、スタイリング/道端亜未]
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 コロナ禍で全公演中止になった舞台が、この5月に同じスタッフ、ほぼ同じキャストで上演される。中止が悔しくて号泣したあの日から2年。その間に、倉科カナは、長いトンネルを抜けた。

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 2年と少し前のことだ。大好きな演出家と憧れの題材に巡り合い、しっかり準備をして臨んだ舞台「お勢、断行」だが、初日目前に、全公演が中止になった。ゲネプロと呼ばれる本番さながらの通し稽古のあと、倉科さんは人目も憚らずに泣いた。悔しさと悲しさで、涙が溢れて止まらなかった。

「お稽古に入るまでは、自分は俳優として何ができるのか、何を求められているのかがわからずに、長いトンネルに入っているような感覚でした。私の世代は個性的な女優さんが多いので、『人は人、私は私』とわかっていても、“自分にしかできないことは?”“私らしさって何?”みたいなことを考え始めると、こんがらがってしまって……。そんな中、大好きなお芝居に没頭できていたのに、せっかくの作品をお客さんにお見せすることができなかったのが残念で、悔しかったんだと思います」

 2009年にNHK連続テレビ小説「ウェルかめ」のヒロイン役で注目されて以来、コンスタントに映像作品の出演が続いていた彼女だが、実は、演劇こそが、「芝居をやっていてよかった」と実感できる場所だという。

「コロナ禍で、いろんなお仕事がストップして、ステイホームを余儀なくされたとき、『何をしようか?』って考えて、世界史の勉強をすることにしたんです。なぜかというと、麻実れいさんと野村萬斎さんが出演されていた舞台の『オイディプス王』を観て、ギリシャ悲劇を読みたくなったから(笑)。作品自体はすごく面白かったけれど、『ギリシャ悲劇やギリシャ神話、もっと言えば、ギリシャ神話が生まれた背景を勉強したらもっと舞台に深く入り込める』と思った。それで、ローマ帝国ができる前ぐらいから勉強し始めました」

 緊急事態宣言が解除され、また仕事に邁進する日々が戻ってきた。でも、「自分に求められているものは何なのか?」という疑問は消えぬまま。

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