倉科カナ [撮影/写真映像部・高野楓菜、ヘアメイク/草場妙子、スタイリング/道端亜未]
倉科カナ [撮影/写真映像部・高野楓菜、ヘアメイク/草場妙子、スタイリング/道端亜未]

「仕事が再開したとき、あらためてマネジャーさんとも、『こっちの方向で行きましょう』という明確な目標を設定しました。映画『女たち』で演じた香織というキャラクターに合わせて、髪を40センチカットしたり……。翌年には舞台も2本──こまつ座さんの『雨』と、『ガラスの動物園』という作品に関わって、井上ひさしさんとテネシー・ウィリアムズの“言葉”に、いろんな場面で心を揺さぶられました。基本的に、目の前にあることを一生懸命やるというスタンスは変わっていないんですが、この2年の間に、長いトンネルを抜けたような感覚があります」

 その、昨年出演した2本の舞台での演技が認められ、倉科さんは今年2月、第29回読売演劇大賞の優秀女優賞を受賞した。

「元々、自分で自分を肯定するのが苦手で(苦笑)。お芝居をやっていて、褒めていただくことがあっても、今までは『お世辞なんだろうな』ぐらいにしか思っていなかった。それが今回賞をいただいたことで、初めて、『私がやってきたことは間違いじゃなかったんだ』『迷ったことも悩んだことも、すべては無駄じゃなかった』と思えた。最初は、審査員の皆さんが私のことを知ってくださっているんだということが驚きでしたけど(笑)」

 自分の成長について、自覚するのは難しい。でも、今回の受賞によって、昔は持ち得なかった何かを、確実に得られている実感があった。

「もちろん、失ったものもあると思うんです。でも、この2年間は明確に、何かを掴めた確信がありました。とくに舞台に関しては、キャリアのためというより、ただ楽しいからやっていて、私にとっては癒やしの場なんです。自分が好きでやっていることで、人に認めてもらえるなんて、こんなに嬉しくて、ありがたいことはないですよね」

 舞台の面白さについて聞くと、「お稽古のときに、私だけでなく周りの俳優さんのお芝居が、突然パッと花開くような瞬間があることです」と、顔をパッと輝かせた。

「お稽古って、役や作品を探求する場なので、そこにいるだけで、自分の芝居の純度が高くなっている感じがするんです。余計なことを遮断して、ただ役に没頭していると、それまで見えていなかったものがパッて見える瞬間がある。そういう体験をすると、『ああ、芝居をやっていてよかったな』と思う。だからお芝居が好きだし、だから続けられるんです」

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