アーティスト・コレクティブ「Chim↑Pom」最大の回顧展「ハッピースプリング」が東京・森美術館で開催中だ。メンバーのエリイさんが「Chim↑Pom」の活動を振り返った。AERA 2022年4月18日号から。
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「結成してまずやったのは、ピンクの液体を吐くこと。それからカンボジアで地雷撤去をしたり、国会議事堂前などにカラスを集めたり、渋谷や歌舞伎町のネズミを捕まえたり。文字にして並べるよりも、今まさに展覧会をやっているので、タイミングが合えば観に来てほしい」
「Chim↑Pom(チンポム)」とは何ですか? そんな質問に、6人組のメンバーのひとり、エリイさんはそう答えた。
結成して17年、社会をさまざまな形で表現し、人々に問いかける活動で知られる。そんな彼らが現代美術の殿堂として知られる「森美術館」(東京都港区)の巨大フロアを使い、これまでの活動の軌跡を見せる回顧展「ハッピースプリング」(5月29日まで)を開いている。
上記に挙げられた作品に、ちょっとだけ説明を加えておこう。例えば「ピンクの液体を吐く」とは、「Chim↑Pom」のごく初期の映像作品《エリゲロ》(2005年)のこと。エリイさんがまわりの「イッキコール」で、ピンクの液体を飲み続け、白い床の上にピンクの液体を吐き続けるという作品だ。
生々しい断片で再現
かと思えば、07年にはメンバー4人が私財を投じてカンボジアに行き、現地の人々の協力を得て、撤去された地雷を爆破処理する際に高級バッグなどを爆破。それをオークションにかけ売り上げを寄付した。
翌年には、広島の原爆ドームの上空に飛行機雲で「ピカッ」という文字を描いて騒動となり、ついには展覧会が中止になるなど、議論を呼んだプロジェクトも多い。
森美術館があるのは、IT長者らの富の象徴としても知られていた六本木ヒルズの53階。そのキラキラした空間に、歌舞伎町の雑居ビルを解体したあとの「がれき」やら、実際にアスファルトを敷いた「道」やら、何かと生々しい社会の断片が運び込まれ、再現された。
キリスト教系の有名女子校に幼稚園から高校まで通ったエリイさんが現代美術に出合い、思ってもみない人生を踏み出すきっかけになったのは、高校時代、美術の授業で出かけた01年の第1回「横浜トリエンナーレ」だったという。