ウクライナ避難民が日本へ連れてくる犬のペットの扱いについて、農林水産省の対応が議論を呼んでいる。特例で、自宅での隔離が認められたからだ。本来、日本は入国の際に厳しい検疫が設けられているため、今回の措置で「狂犬病が持ち込まれるのでは」などと懸念する声が相次いでいる。しかし、専門家らは「科学的に問題ない」。ネットにうずまく疑問や誤解を解消すべく、取材を進めてみた。
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ことの発端は、ウクライナから来たポメラニアンだった。報道によると、キーウから日本へ飼い主とともに避難してきたが、空港の検疫でひっかかってしまったという。
日本では狂犬病予防法に基づき、日本国内に来る前に、マイクロチップによる個体識別できるようにし、狂犬病ワクチンを2回接種し、十分な抗体ができているか抗体検査で確認することなどが求められている。一連の措置を行ったことを証明する国の書類がないと、動物検疫所で最大180日間、隔離されることになる。
狂犬病は発症するとほぼ100%死に至るという恐ろしい病気だ。日本では狂犬病の撲滅に成功し、1956年を最後に発生した例はない。日本のほかには、アイスランド、オーストラリア、ニュージーランド、フィジー諸島、ハワイ、グアムの6地域のみが狂犬病を撲滅した清浄国とされている。
ロシアによるウクライナ侵攻より、日本にもウクライナの避難民がやってきているが、その中には5匹の犬の姿もあった(18日時点)。その内の一匹が冒頭に紹介したポメラニアンだ。ワクチン接種など国が証明する書類がなく、動物検疫所に留め置かれたという。
報道では、留め置かれたことによって1日3千円の業者による飼育料がかかり、合計で50万円以上かかること、場合によっては殺処分もあり得ることが紹介された。
こうした状況が報道されるとSNSでは、
<大変な思いして避難してきた人をなぜ追い詰めるようなことをするのか>
<飼い主から離され、怯えた様子のポメラニアンを見て涙が止まらない>
といった声が相次いだ。