特例措置の全体図。農水省動物検疫所HPより
特例措置の全体図。農水省動物検疫所HPより

 こうした声を受けて、農水省は15日付の決定で、特例として、一連の必要な措置が書類で証明できない場合、動物検疫所において2回のワクチン接種や抗体検査を行い、さらに飼い主が1日2回の健康観察と週1回の報告をすること、他の動物と接触させないなどを条件に、動物検疫所で隔離はせず、飼い主と過ごせるよう規定を改めた。農水省関係者も「避難民と一緒にペットが来ることを想定できていなかった」と話す。

 しかし、今度はこの特例措置に対して批判の声が上がった。多くが、狂犬病に対する不安の声だ。

<狂犬病の防疫には例外を作るべきでない。先人たちが払った努力を軽視している>
<発症したらほぼ100%死亡するし、犬の殺処分だって大きく増加する可能性が高い>
<唾液にウイルスは排出されるから口元や傷口舐められても感染するリスクがある>

 といった声が目立つ。こうした発言には内科医や獣医師を名乗る人の声もあった。

 これに対して、農水省動物検疫所の担当者は「あくまでも現行の検疫制度の枠組みの中での措置」と当惑する。ワクチンの2回接種や抗体検査をしたうえで、健康観察などの対応をしていれば、狂犬病の感染が広がるリスクは高まらないと考える。動物検疫所では10日に1度の立ち入り検査も行い、適切な対応が取られていなければ「厳しく対応する」という。

 専門家はどう見るか。狂犬病に詳しい岐阜大の杉山誠副学長(人獣共通感染症学)は「緊急的な農水省の措置だが、科学的に問題ない。むしろ避難民の心に寄り添った粋な対応だ」という。

「狂犬病の感染が広がるのではないか」という懸念に対してはこう説明する。

「健康な状態で、かつ、抗体検査で抗体が確認できれば、ワクチンを確実に打っていることになります。狂犬病は致死的な病気なので、自然に抗体を持っていることはありません。発症した後、抗体が上がることがありますが、その犬は神経症状が出ており、すぐにわかるでしょう。新型コロナと違い、ワクチンにより免疫を獲得したにもかかわらず感染していることはありません。農水省のいまの対応であれば、狂犬病の感染が広がるリスクは限りなくゼロに近い」

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殺処分は本当にされるのか