また、球種別に見ると、フォークの空振率46.7%も1位(14年以降を対象)だ。上位には投球回数の少ない中継ぎや抑えの投手が名を連ねており、先発投手で佐々木の次に出てくるのは、17位の金子千尋(日本ハム)だ。球種は同じくフォークで30.2%(14年。当時はオリックスに所属)。
「データが示すのは、打者は佐々木の球に当てることすら難しいということです」(大南さん)
「奪三振率」でも往年の名投手を上回る数値をたたき出している。今シーズンの佐々木の奪三振率は54.5%。これは元・阪神タイガースの江夏豊投手の31.9%(1968年)を大きく上回る。もちろん佐々木はまだ23イニングしか投げていないが、「このままいけばとんでもない数字を残すかもしれない」と大南さんは期待を寄せる。
「彼の強みは何と言ってもボディーバランス。今まで見たことがないニュータイプです」
そう語るのは、「流しのブルペンキャッチャー」として全国各地のアマチュア選手の取材を続けてきたスポーツライターの安倍昌彦さんだ。
安倍さんが佐々木を初めて見たのは高校2年の夏の地方大会初戦。試合前の遠投を見て、驚きから「ひっくり返った」と話す。当時の衝撃を安倍さんはこう語る。
「彼は、遠投でも投球フォームと同じように、左ひざが鼻につくくらい上がる。それだけ足を上げても、上半身が後ろに傾くわけでも前傾姿勢になるわけでもない」
安倍さんはその姿を「つむじが天頂に向いて、物干しざおが頭から軸足の先まで垂直に突き刺さったかのよう」と話し、こう続ける。「並のボディーバランスと体幹の持ち主だったら、こうはならない」
さらにこのバランス感覚が持ち味の速球にも好影響を与えているという。
「体重移動がスムーズに進むので、マウンドの傾斜を借りて踏み込めば球速が勝手に出る。投球フォームでは、左肩がホームベース、右肩がバックスクリーンに向いている時間を長くとれるのが長所。リリースのぎりぎりまで左肩がホームに向いていて、踏み込んで最後の最後に一気に右肩と左肩が入れ替わるイメージ」