――ロシア軍は現在、東側地域への兵力を増強しています。今後の展開はどうなるでしょうか。

 プーチン大統領は、東側地域のロシア語を話す人たちをテコに、ウクライナをコントロールしようとしています。ですが、もはやロシア語を話す人は親ロシアではなくなっています。そう簡単に屈することはないでしょう。

 ロシアは5月9日の第2次世界大戦の対独戦勝記念日までに戦果を得ようとしているという情報がありますが、それまでに望む戦果は得られないと思います。

 これまでの状況から、プーチン大統領はウクライナを非常に甘く見ていたことがわかります。首都キーウは数日で陥落させられると考えていたわけで、その先の計画は最初からなかったのではないか。対独戦勝記念日までの見通しすら持っていないのではないでしょうか。

 ウクライナ危機は、長期化すると思います。少なくとも1年はかかるのではないでしょうか。

 ロシアとウクライナを仲介する、停戦交渉のホストをどの国がやるのか。米国のバイデン大統領は、ロシア軍によるウクライナ侵攻は「ジェノサイド(集団殺害)」にあたると非難していますし、これでは仲介できません。中国は国連でのロシア非難決議を棄権し、ロシアとの経済連携も続けていて、同じく仲介できません。ホストに手を挙げる国はなかなか現れないでしょう。

 残された道は二つです。ロシアがウクライナを屈服させるか、ロシアがウクライナに対する要求を取り下げるか。

 ロシアは大国のように感じられますが、国内総生産(GDP)は韓国より小さく、軍の組織も決して大きくはありません。となると、ウクライナの屈服は非常に難しい状況です。

 では、ロシアがウクライナに対する要求を取り下げるか否か。

 戦争が長期化するにつれて、ロシア内部から経済的な不満や、宗教界からの反発、反戦を掲げるマスコミの力が噴出してくるのは間違いありません。その足元の揺らぎは、確実にプーチン大統領を追い詰めていくでしょう。その時、ウクライナ危機は終わりに向かうのではないかと考えています。

(構成/編集部・古田真梨子)

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古田真梨子

古田真梨子

AERA記者。朝日新聞社入社後、福島→横浜→東京社会部→週刊朝日編集部を経て現職。 途中、休職して南インド・ベンガル―ルに渡り、家族とともに3年半を過ごしました。 京都出身。中高保健体育教員免許。2児の子育て中。

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