渡辺:僕も英語でお芝居をする時は、基本的に日本語でやろうとしているのと同じことを英語でできないと、僕を使う意味がないと思っている。英語であっても、日本語でお芝居をするときと同じように、自分の体というか、血液の流れみたいなものがないとダメだと思っています。アンセルにも、英語で自分が普通に話すのと同じように日本語も話せないと、演技としては過剰だったり足りなかったりということがある、という話をしました。

■シーズン2があったら

アンセル:英語と同じように日本語を話すのはすごく難しかったですが、やる気になりました。このドラマに出演してよかったことは、成長できる時間があったことです。キャラクターも発展させることができました。もし、「TOKYO VICE」が映画だったら、そんなに日本語が上手になれなかった。

渡辺:映画はよくて2時間ちょっとだからね。映画だとそれぞれのキャラクターの断面みたいなものを積み重ねていく作業になります。でも、今回のように8話分の物語があると、キャラクターたちの複雑に絡み合ったバックグラウンドを僕らもより深く演じることができる。「この話の中ではこれは見せなくていい」というように、(視聴者に対し)キャラクターを戦略的に見せることができます。おもしろかったよね。

アンセル:僕はドラマは空き時間ができるのがよかったです。映画で主役だとずっと出ることになるので、そうはいきません。実は、1話では僕は毎日撮影がありましたが、2話から8話までは出ていないところも結構あったんです。午後から暇ができた時は、日本語の先生に電話をして「勉強してもいいですか」と。勉強する時間があってよかったです。

渡辺:すごく成長したと思うよ。シーズン2があったら、アンセルがすべて日本語で話すこともあるかもしれないね。

アンセル:ありがとうございます。シーズン2があったら、私は役のためにもっと日本語が上手になります。合気道と書道もやりたいです。

渡辺:僕はこのシリーズの最後となる第8話の台本を読んだ時にのけぞったんだよ。「おいおい、これどうするのよ?」って(笑)。だから、シリーズが続かなかったら怒られると思うよ。

アンセル:皆さん、ぜひ見てください!

(構成/フリーランス記者・坂口さゆり)

AERA 2022年4月25日号