もちろんそれまでにもあったのでしょうが、とりわけダウンタウンが全国区になって以降、世間にとって「お笑い」とは、「笑う」以上に「語る」ものへと、より変化していったように感じます。例えば音楽や映画、はたまた野球・サッカー・格闘技などのスポーツがそうであるように、理論(セオリー)や技術(テクニック)や歴史(ストーリー)への認識を深めることこそが、今や「お笑い」という芸能を消費する上での肝となり、メディアの側もその文脈にいっさいの注釈なしで則った見せ方が普通になっています。それだけ「お笑い」があらゆる芸能の中でも抜きん出た存在になったということなのでしょうが、気付けばテレビは「お笑い好きのお笑い好きによるパターン化したお約束だらけの空間」になっているのも事実です。

 今回、特に目立ったのが「舞台袖に詰めかけた後輩芸人たちの感動と興奮」を書いた記事でした。まさに現在のお笑いと世間の関係性が凝縮されており、私が「ダウンタウン31年ぶりの漫才」のニュースにいまいち興奮できなかった理由はここにあります。純粋に笑ったり興奮したりするにはフィルターが多過ぎるのです。斯く言う私も理屈好きなので、自戒の念も込めて……。

ミッツ・マングローブ/1975年、横浜市生まれ。慶應義塾大学卒業後、英国留学を経て2000年にドラァグクイーンとしてデビュー。現在「スポーツ酒場~語り亭~」「5時に夢中!」などのテレビ番組に出演中。音楽ユニット「星屑スキャット」としても活動する

週刊朝日  2022年4月29日号

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