ドラァグクイーンとしてデビューし、テレビなどで活躍中のミッツ・マングローブさんの本誌連載「アイドルを性(さが)せ」。今回は、「ダウンタウン」について。
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ダウンタウンが本格的に東京へ進出したのが1989年だそうです。その年に始まった『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』を皮切りに、『ダウンタウンのごっつええ感じ』(91年)、『ダウンタウンDX』(93年)、『HEY!HEY!HEY! MUSIC CHAMP』(94年)、さらには『夢で逢えたら』や『ダウンタウン汁』といった深夜番組も含め、90年代の関東のテレビにおけるダウンタウンの勢いたるや凄まじいものがありました。
当時私は高校から大学にかけての時期。ずっと関東の文化圏で育ち、「ドリフ」や「ひょうきん族」や「とんねるず」が、お笑い番組の原風景だった私にとって、ダウンタウンの登場は実に革命的でした。彼らを通して知る「西の言語・感性」もたくさんありましたし、何よりお笑い芸人が天下を取っていく様を、つぶさに目の当たりにしたのも初めてだったように思います。
そんなダウンタウンのふたりが、先日「31年ぶりに」客前で漫才を披露したことで大きなニュースになりました。確かに、ダウンタウンが「漫才(事前に作られた即興ではないふたり喋り)」をしなくなってから久しいことは認識していましたが、一方で「漫才的スタンス」に基づいた掛け合いをもっとも多くテレビで見せてきたコンビと言えば、間違いなくダウンタウンなわけで、お笑いに対してそこまで細かい目盛りを持ち合わせていない私としては、この「31年ぶり」をどのように受け止めればいいのか迷うところでもあります。これが「GEISHA GIRLSが27年ぶりに復活!」とかだったら、個人的な興奮度合いはもっと凄かったはずです。
何に値打ちを見出すかは、人それぞれ違って当然ですが、これほどドンピシャな世代であるにもかかわらず、今回の「ダウンタウン31年ぶりの漫才」に沸く世間の熱量から取り残された感がどうにも拭えず、改めていろいろと考えてみました。