なぜ個室トイレが空かないのか、何をしているのか――誰しも一度は、こんな思いをしたことがあるのではないだろうか。トイレの洋式化や衛生面の向上などもあり、時代とともに個室トイレの利用時間は増加傾向にあった。しかし、調べてみるとコロナ禍でその傾向に変化が起きていることがわかった。いったい日本の個室トイレで何が起こっているのか。
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これまで個室トイレの利用時間は増加傾向をたどっていた。和式から洋式へ、汚いトイレからキレイなトイレへと変化し、居心地の良さが高まったことが背景にあると見られている。さらにスマートフォンの普及で、個室内でのゲーム利用など以前にはない“要因”も増えてきた。
そんな状況下で変化をもたらしたのが、新型コロナの感染拡大だった。
感染リスクへの意識が日常的に高まっていることもあり、不特定多数の人が使用するトイレの利用を控え、利用時間の増加に歯止めがかかる――と思いきや、実はそうはなっていないようだ。
駅トイレの利用時間増
「首都圏の駅トイレでは、コロナ前に比べて、個室の利用時間が男女ともに長くなっている傾向が見られました」
そう指摘するのは、トイレのパーティションなどをつくるコマニー(石川県)研究開発課長の高橋未樹子博士(人間環境デザイン学)だ。
JR東日本、コマニー、ベクトル総研が首都圏大規模ターミナル駅の改札内のトイレを対象に2020年1月から約1年間にわたって調査したデータによると、感染拡大前(20年2月14日以前)の個室トイレの利用時間は男性で343秒、女性で161秒だった。2月、3月の利用時間はほぼ同じで大きな増減は見られなかったが、緊急事態宣言が出された4月以降は、全ての月で感染拡大前の利用時間を上回った。4月は男性で364秒、女性で188秒、21年1月も男性が349秒、女性が180秒という結果だった。
なぜコロナ禍で利用時間が増加しているのか。高橋氏はこう見る。
「コロナで駅構内の飲食店の営業時間が短くなったり、閉まっていたりして時間を潰すところがなく、トイレに長居した人がいるのではないかと見ています」