広瀬すずさん(右)と林真理子さん [撮影/張溢文、ヘアメイク/奥平正芳、スタイリング/丸山晃]
広瀬すずさん(右)と林真理子さん [撮影/張溢文、ヘアメイク/奥平正芳、スタイリング/丸山晃]
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 今年、デビュー10周年を迎えた俳優の広瀬すずさん。新作映画「流浪の月」は松坂桃李さんとのダブル主演で、2度目の出演となる李相日監督作品です。複雑な感情が絡まり合う本作、広瀬さんは主人公の更紗を演じ、「壁に当たったまま終わった」と感じたんだとか。作家・林真理子さんが進化を続ける実力派俳優の今に迫ります。

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林:「情熱大陸」(TBS系)が2週にわたって広瀬さんを取り上げてましたけど、あの中でこの映画のメイキングのシーンがあって、刑事さんとのやりとりの場面で李監督が「刑事さんに訴えるんじゃなくて、もっと別の感情の出し方を」と言って、何度も何度も撮りなおしていたじゃないですか。監督に言われたことを自分の中で咀嚼して、また別の言い方をするわけですね。

広瀬:李さんは抽象的な感じで、演出の指示もニュアンスでおっしゃるんです。自分で考えて生まれたものを信用してくださってるんだと思うんですけど、ニュアンスだけで聞いてしまうと、私の咀嚼の仕方が違ったりするんですよね。「そこは違う」って言われて、あのシーン、20テイクやりました。20回目で言ってる意味がやっとわかって、それでやってみたら「その方向」って言われたんです。

林:20種類演じ分けたわけですね。李監督、直接教えてくれないの?「こう言ってみて」とか。

広瀬:「こう言ってみて」の“こう”が具体的ではなくて、あえてニュアンスでしか教えてくれないんですよね。そういうことは李組の中ではよくあります。

林:李監督の作品は、映画「怒り」(16年)にお出になってましたけど、あのとき広瀬さん、「もう李監督には呼ばれないだろうな」と思ったって本当? 期待に沿えなかったんじゃないかと思って。

広瀬:呼ばれないと思ったというか、そう簡単には参加できない組だし、私も10代だったので、「しばらくはないだろうな」ぐらいの気持ちでした。

林:でも、まだ23歳でしょう? 23でここまで来ちゃって、このあとどうするの?って感じですよね(笑)。これを超える作品とか役をやるのって大変だと思う。

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