広瀬:「この作品はこうだから」とおっしゃる方ではなく、映画は映画として楽しんでいただいている雰囲気が伝わってきました。「更紗ってそんなふうに感じてたんだ」という視点でした(笑)。

林:うれしかったんじゃないですか、凪良さん。広瀬さんに更紗をやっていただいて。私も更紗役って広瀬すずさんしか思い浮かばないです。このイノセントな感じ、ぴったりだったなと思います。

広瀬:ありがとうございます。

林:これで壁一つ突き抜けたという感じしませんか。

広瀬:いや、壁に当たったまま終わったので、試写で初号を見たとき「ヤバい!」と思いました。

林:どうして?

広瀬:桃李さんが素晴らしすぎて感動を覚えつつ、「私、ヤバい」と思って、李さんに感想も言わず、逃げるように帰りました(笑)。

林:そんなことないです。素晴らしい演技でしたよ。考えてみると、是枝(裕和)監督とか李監督とか、巨匠と言われる監督に若いときから鍛えてもらってるって、すごいことですよね。

広瀬:私、岩井俊二さんの作品を見てすごい好きになって、岩井さんの現場にも何回か参加させてもらったんですけど、岩井さんの場合はあの時間の流れ方とか独特だし、李さんも独特だし、是枝さんもぜんぜん違うジャンルだし、慣れることは一生ないだろうなって思います。

林:これからまた別の監督さんとチームを組んで映画をつくっていくわけですよね。

広瀬:そうですね。李さんも是枝さんも2回ずつお世話になっているんですけど、もう一度呼んでもらえたら光栄だなと思います。でも、年齢を重ねていけば新しい出会いも減っていくので、だからこそ挑戦したいなという気持ちがすごくありますね。

林:このあいだ津田梅子を見ましたよ(スペシャルドラマ「津田梅子~お札になった留学生~」)。英語、すごくうまいのね。

広瀬:いえいえ、なんにもしゃべれないんです、私。

林:でも、あの長い英語のセリフ、すごくうまかったと思う。

広瀬:もうやめてという感じです。ほんと英語は「カンベンして」ですね(笑)。

(構成/本誌・直木詩帆 編集協力/一木俊雄)

広瀬すず(ひろせ・すず)/1998年、静岡県生まれ。2012年、雑誌「Seventeen」でモデルデビュー、翌年俳優デビュー。15年の映画「海街diary」で数々の新人賞を受賞。17年「ちはやふる−上の句−」で日本アカデミー賞優秀主演女優賞、18年「三度目の殺人」で同最優秀助演女優賞など、受賞歴多数。その他の出演作に映画「怒り」(16年)、「ラプラスの魔女」(18年)、「一度死んでみた」(20年)など。5月13日から松坂桃李とW主演の映画「流浪の月」(李相日監督)の公開が控える。

週刊朝日  2022年5月6・13日合併号より抜粋