
お笑い芸人で芥川賞作家の又吉直樹さん。好きな本に『ストーリーのある50の名作椅子案内』を挙げた。脚本を手掛けた「WOWOWオリジナルドラマ 椅子」でも参考にした本だという。どんな内容の本なのか。AERA 2022年5月2-9日合併号から。
【写真】又吉さんが選んだ『ストーリーのある50の名作椅子案内』
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アルヴァ・アアルトの「スツール60」、アルネ・ヤコブセンの「アリンコチェア」、パリの老舗カフェでも使用されている真っ赤な「Aチェア」……。デザインジャーナリストの萩原健太郎さんが、「50人のデザイナーによる50脚の椅子」を取り上げた一冊。機能面だけでなく、デザイナーの出自や、デザインが生まれた背景を見開きごとに1脚ずつ丁寧に紹介している。1800年代半ばに発表された椅子もあれば、戦火を逃れ存在し続ける椅子も、大量生産・大量消費への疑問から生まれた椅子もあり、まさに「椅子に歴史あり」を実感できる。「名作椅子をより理解するための用語集」などのコラムも読み応えがある。

デザイナーたちの名言もちりばめられており、なかでも又吉さんのお気に入りは、フィリップ・スタルクの「私がデザインしたものすべては不必要だった」という言葉だ。「言葉通り受け取るというよりは、『まだまだ新しいものができる』という意味も含まれているのだろうと思います。すごく面白い言葉だなと感じました」(又吉さん)
※AERA 2022年5月2-9日合併号